特殊健診及び健康管理手帳制度における健康診断のうち、化学物質を取り扱う有害業務に係る健康診断について、労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則が一部改正され、本年7月1日から施行されます。
<改正のポイント>
*厚生労働省ホームページ内PDFファイル「化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目を見直しました(令和2年7月1日施行)」より引用
1.尿路系に腫瘍のできる化学物質の特殊健診項目の見直し(特定化学物質障害予防規則関係)
尿路系に腫瘍のできる化学物質(11物質)について、同様の障害を引き起こすとされ、最新の医学的知見を踏まえて設定されたオルトートルイジンの項目と整合させました。
対象物質:ベンジジン及びその塩、ベーターナフチルアミン及びその塩、4-アミノジフェニル及びその塩、4-ニトロジフェニル及びその塩、ジクロルベンジジン及びその塩、アルファーナフチルアミン及びその塩、オルトートリジン及びその塩、ジアニシジン及びその塩、オーラミン、パラージメチルアミノアゾベンゼン、マゼンタ
2.特別有機溶剤の特殊健診項目の見直し(特定化学物質障害予防規則関係)
特別有機溶剤(9物質)について、発がんリスクや物質の特性に応じて、項目を見直しました。
対象物質:トリクロロエチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、スチレン、クロロホルム、1,4-ジオキサン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、メチルイソブチルケトン
3.カドミウム及びその塩の特殊健診項目の見直し(特定化学物質障害予防規則関係)
新たに得られたヒトに対して肺がんを引き起こす可能性があるという知見への対応や、腎機能障害の早期発見のため、項目を見直しました。
4.肝機能検査の見直し(特定化学物質障害予防規則関係)
オーラミン等11物質については、職業ばく露による肝機能障害リスクの報告がないことから、「尿中ウロビリノーゲン検査」等の肝機能検査を必須項目から外しました。
対象物質:オーラミン、シアン化カリウム、シアン化水素、シアン化ナトリウム、弗化水素、硫酸ジメチル、塩素化ビフェニル等、オルトーフタロジニトリル、ニトログリコール、パラーニトロクロルベンゼン、ペンタクロルフェノール(別名PCP)又はそのナトリウム塩
※下線は、二次健康診断において医師判断で肝機能検査を実施する物質
5.赤血球系の血液検査の例示の見直し(特定化学物質障害予防規則関係)
近年、臨床の現場で全血比重検査があまり使われていないため、赤血球系の血液検査の例示から、全血比重検査を削除しました。(6物質)
対象物質:ニトログリコール、ベンゼン等、塩素化ビフェニル等、オルトーフタロジニトリル、パラーニトロクロルベンゼン、弗化水素
6.有機溶剤の特殊健診項目の見直し(有機溶剤中毒予防規則関係)
有機溶剤について、医師が必要と認めた場合に「腎機能検査」を実施できることとなっていること、また、必須項目の中に他に労働者の有機溶剤ばく露状況等を確認できる項目があり、健康障害のスクリーニングが可能であることから、必須項目から「尿中の蛋白の有無の検査」を外しました。
7.四アルキル鉛の特殊健診項目の見直し(四アルキル鉛中毒予防規則関係)
最新の医学的知見や取扱量の減少等を踏まえ、鉛と同様、長期的なばく露による健康障害の予防とすることとし、鉛則の項目と整合させ、実施時期を「3月以内ごとに1回」から「6月以内ごとに1回」を見直しました。
8.作業条件の簡易な調査の追加
(有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則関係)
労働者の化学物質へのばく露状況を確認するため、必須項目に「作業条件の簡易な調査」を追加しました。
9.尿路系に腫瘍のできる化学物質の健康管理手帳制度における健診項目の見直し(労働安全衛生規則関係)
「1.尿路系に腫瘍のできる化学物質の特殊健診項目の見直し」の11物質のうち、健康管理手帳制度の対象であるベンジジン等3物質について、健康管理手帳制度における健診項目もオルトートルイジンの項目と整合させました。
対象物質:ベンジジン及びその塩、ベーターナフチルアミン及びその塩、ジアニシジン及びその塩
(※)「健康管理手帳」について
がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務に従事していた労働者に、国が健康管理手帳を交付して、無償で健康診断を受けられるようにする制度。